真夏のバス停

バス停と怪獣

真夏のバス停

 

真夏のバス停に
一匹の生き物が立っている
たった今しがた
晴れ渡った八月の空から
一条の光が射し
その生き物は天から
光の中を下りてきたのだ

 

生き物の口は耳まで裂け
鋭い牙が剥き出しだ
背中には多数のトゲが
体じゅうに青い鱗が
しっぽの先は放射能で光り
口から吐く息に炎が混じる

 

眼光は鋭く憎悪に満ちている
ああ
彼はいったい何のために
この地にやってきたか
街を破壊し
人々を恐怖に陥れるため
しかし彼の背たけは
百六十センチメートルに満たなかった

 

見よ
彼は鋭い雄たけびをあげ
口から紅蓮の炎を吐き
時刻表に
恐ろしい焼け焦げを作った
そしてそれでも怒りはおさまらず
野菜の無人販売ボックスを
鋼のような尾の先で蹴散らした
百円玉、十円玉、五円玉が
無残にも散らばる

 

見よ
彼の憎悪の深さを
しかし夏の日射しは高く
だれひとり彼を見るものはなかった

 

バスは運休していた
プール帰りの子供たちが
遠くを歌いながら通り過ぎた

 

生き物は思った
オレは何のために
生まれてきたのか
オレは
何をなすべきなのか

 

太陽は高く
風は吹き
時は流れた
人は通らず
バスは来ない
蝉が鳴く
蝉が鳴く

 

真夏のバス停に
底知れぬ
憎悪を秘めた生き物が
いまも立ち尽くしている

田舎の道と子供達

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