窓をたたく人

窓をたたく人

 
窓の中の人がガラスをたたく
その口が何か言っている
ボクには声が聞こえない
窓の中の人が何か訴えている
目が真剣だ
きっと重要なことなのだ
しきりに何か言っている
ボクに知ってもらいたいことがあるのかもしれない
でもそれを知ることなんてできるだろうか?
ボクにそんな能力があるだろうか?
 
ボクの脳みそはてんとう虫程度だ
晴れた日に遠くへ飛んで
どこから飛んできたのか忘れてしまう
どこかの葉っぱにとまり
そこが幸せな場所か忘れてしまう
そしていつかは葉っぱから落ちて
そんな自分を
哀れにも思わないんだろう
 
窓の中の人に言ってあげたい
君が語るべき相手はボクじゃない
こんなてんとう虫程度のボクじゃない
ふさわしい人がどこかにいる
窓の中の人は急いでいるみたいだ
急いで苦しんでいるのかもしれない
きっと苦しんでいるんだろう
でも苦しむってどういうことだろう?
 
ボクもいつかは苦しんだことがあった
でもいつかだし今じゃない
ボクは未来に苦しむかもしれない
でもいつかだし今じゃない
 
だってボクは今
こんなにも晴れ晴れした気分だ
窓の中の人は
ガラスをたたいているけど
 

葉の上のてんとうむし

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